2011年10月19日水曜日

映画「インサイド・ジョブ」第1部

映画「インサイド・ジョブ」

目次

プロローグ アイスランドの破綻

第1部 これまでの経過

第2部 バブル 2001-2007

第3部

第1部 これまでの経過

大恐慌後、

米国は40年 成長を続け一度も金融危機はなかった。

金融界は厳しく規制され、普通銀行は預金で陶器を行うことが禁じられていた。

証券業取引を行う投資銀行は共同事業形態だった。


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サミュエル・ヘイズ ハーバード大学ビジネススクール名誉教授

伝統的な投資銀行のモデルでは

共同事業者が出資し

資金運営に目を光らせていた。

彼らは利益を求めたが博打は望まなかった。

モルガン・スタンレーは1972年当時

従業員は全部で110人だった。

オフィスは一つで資本金は1200万ドル。

現在 モルガン・スタンレーは従業員5万人

資本金は数十億にも達し、世界中に支店がある。


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P・ボルカーは財務次官から

連邦準備制度理事会議長(FRB)を1979年から1987年まで務め

以前はチュース・マンハッタン銀行に籍を置いていた。

ポール・ボルガー

「69年にチュースから財務省に移った時

年収は4万5000ドルぐらいだ。

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1980年代 金融界は激変した。

投資銀行が株式を公開し、大量の資金を手にする。


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1981レーガン大統領は財務長官にメリルリンチCEOのリーガンを選んだ。

ドナルド・リーガン財務長官1981-1985

「金融界と大統領の見解は同じだ。

各行のトップも全面的に支持している。」


学者とロビイストに支援されレーガン政権は、

30年にわたる規制緩和に着手した。



1982年S&L(貯蓄貸付組合)への規制が撤廃される。

預金による危険な投資が認められ、

80年代末までにS&Lの破綻が相次いだ。

救済には税金が1240億ドルが投入され

多くの人が預金を失った。


史上最大の”銀行強盗”。

大勢のS&L経営者が横領で逮捕された。


最たる例がC・キーティングだ。

1985年 連邦による捜査が始まると

彼はグリーンスパンという男を雇う。

グリーンスパンは上申書に”彼は堅実で経験豊か”

”投資を認めても危険はない”と書く。

謝礼は4万ドルだといわれている。

後にキーティングは逮捕、

グリーンスパンはレーガン大統領によりFRB議長に任命され、

クリントンとブッシュからも再任された。


クリントン政権下でも規制緩和は続く、

財務長官はゴールドマン・サックスのR・ルービン

ハーバード大学教授のL・サマーズが務めた。

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金融業界は強大になり、

豊富な資金とロビー活動で

徐々に民主、共和両党陣営の政治システムを取り込んだ。

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90年代後半 金融機関は合弁で巨大化が進んだ。

破綻すれば業界全体に脅威が及ぶ。

クリントン政権も巨大化を助けた。

1998年シティーコープとトラベラーズの合弁

世界最大の金融機関シティグループが誕生。

この合弁はグラス・スティーガル法の違反だった。

同法は危険な投資業務を普通銀行に禁じていた。

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ロバート・グナイズダ グリーンライニング協会元理事

「トラベラーズ獲得は違法だ。FRBは咎めず、

1年の猶予を与え後にある法律を成立させた。」


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1999年ルービンらの後押しでグラム・リーチ・ブライリー法

通称”シティグループ救済法”が成立。


グラス・スティーガル法は廃止、合弁への道が開けた。


ルービンは後にシティグループの副会長に就任。
彼は本作の取材を断った。

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ウイレム・ブイター シティグループ主席エコノミスト

「巨大化するのは独占力がつき、ロビー活動も強力になるし、

巨大だと救済されるとしってるからだ。」

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ジョージ・ソロス ソロス・ファンド・マネジメント会長

「市場は本質的には不安定。常に不安定になりうる。

例えるならタンカーだと思ってくれ。

タンカーは巨大なため隔壁で区切られている。

石油が揺れ動き船が転覆するのを避けるためだ。

それを考慮してタンカーは設計される。

大恐慌後の規制とは、市場にこの隔壁を導入することだった。

規制緩和は、この区画化を終わらせてしまったんだ。」


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次の危機は90年代末

インターネット株のバブルが発生し、

2001年にはじけると5兆ドルもが吹き飛んだ。



※金融緩和と言って通貨を増やし、最後は金融引き締めでバブルをはじけさせる。
借金という元手のかからない通貨を発行し、株式や不動産という資産を買わせてから取り上げる。
露骨に銀行が資産を取り上げるとバレるので、不良債権で大変だ、大損したと騒ぐ。
挙句の果ては金融安定化と言って税金までもらう。
バブルは通貨供給量を増やして起こし、通貨供給量を突如減らして、バブルをはじけさせる。
まさに市場は”紙”の手に委ねられている。
表向きは、景気が良くなり株が上がるので銀行融資が増えることになっている。
実は通貨が増え株が上がっているにすぎない。
景気とは通貨の流通量である。
通貨を発行(融資の増額)しても博打に使われているだけでは景気が良くならない。
一般消費者に通貨が行き渡らず、博打に通貨がいくため、
実体経済がやせ細ってしまった。
しかも、実際の生産物、サービス以上の通貨が発行さてしまった。
昔は政府主導で預金封鎖をしていたが、
今度は市民主導で通貨切換えで実体経済を守ったらどうだろうか?
このまま博打に突っ込んだ通貨が実体経済に流れてきたら大変なことになる。
流動性のある資源や米などの価格が暴騰してしまう。
バブルでなくジンバブエドルのようなハイパーインフレとなるだろう。
通貨とは信用である。
ある意味、信仰といってもよい。
お互いに信用し合ってこそ通用する。
信頼を失った者は通貨を発行することができない。
通貨は信用と言う実体のない「無」から作られる。
通貨は、イメージによって実態がつくられる過程を担っている。
正しい社会のイメージが安定した社会を築く。
強欲はバランスを崩し、崩壊する。

投資銀行を監督する連邦機関、SEC(証券取引委員会)は何の策も講じなかった。

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エリオット・スピッツァー NY州司法長官

「連邦政府は有効な行動を起こさず、

自主規制も機能しない。

誰かが踏み込んで保護を行うべき時です。」

彼の捜査で危ないネット企業体を勧めた実態が明らかになった。

証券アナリストは金を握らされ、

本音と違う分析を顧客に伝えていた。

最高評価のインフォスペース社、某アナリストは”クズ会社”と

同じくエキサイト社は”最低のガラクタ”

エリオット・スピッツァー 元NY州知事 元NY州司法長官
「ほとんどの投資銀行の抗弁は

”悪いことはしていない”ではなかったんだ。

”他社でもやってるし、アナリストを信じる奴はいない”」

「金融業界の犯罪というのは、ある種 独特の感じがあると思うんです。

それに対して、インテルやグーグルやアップルやIBMは、

確かにハイテク業界と対照的だ。

ハイテクは創造的だ。

価値や新しい物を作ることで収入を得る。」

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2002年12月

10社に合計14億ドルの罰金が科せられて

勧誘法が改められた。




S・タルボットの金融サービス円卓会議

世界の主要金融機関を代表する強力なロビー団体だ。


本作スタッフ
「あなたの顧客数社が重大な犯罪に関わりどんな気持ちです?」

スコット・タルボット 金融サービス円卓会議主席ロビイスト
「どの会社です?そもそも犯罪とは言えない。

多くの商品や顧客を扱うからミスも起きる。」




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規制緩和が始まると金融業界は資金洗浄や

詐欺行為や粉飾決算で何度も逮捕者をだした。

JPモルガン贈賄

リッグス銀行 チリの独裁者ピノチェットの資金洗浄


クレディ・スイス米国の制裁違反

クレディ・スイスはイランの核開発と弾道ミサイル建造資金を違法に送金した。

同行は罰金5億3600万ドルを払った。


シティバンクは麻薬の金の送金を行った。


メリルリンチ JPモルガン シティバンク

エンロンの不正会計に関与 罰金3億8500万ドル



90年代に入ると規制緩和と金融工学が

デリバティブという金融商品を生む。

関係者は市場が安全になると主張。

だが逆に不安定になった。

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アンドリュー・ロー MIT教授 金融工学研究室室長

「当局や政治家や経営者はデリバティブの脅威を

本当に分かっていない。」



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デリバティブは何でも投資対象にする。

石油価格の変動 会社の倒産 天気にも投資可能だ。


90年代末 デレイバティブは50兆ドル規模にまで膨れあがる。


1998年 規制に立ち上がる者がいた。

B・ボーンはロースクールを首席卒業し

同校法律誌 初の女性編集長となった。

法律事務所で金融訴訟を学び、

商品先物取引委員会(CFTC)の委員長に指名され、

市場を監督していた。

ボーンに誘われてスタッフになったマイケル・グリーンバーガー

「我々はデリバティブ市場が潜在的に

不安定な市場だと見ていた。」

1989年5月 CFTCはデリバティブ規制を提案した。

すぐに財務省が反応する。

サマーズからボーンに電話がかかり

「銀行があなたを訴えている。規制をやめろ。」と言われた。

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サタジット・ダス デレイバティブ・コンサルタント
「銀行は収益をデレイバティブに負っている。

だから規制はさせまいと、必死の戦いを繰り広げたんだ。」


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グリーンスパンルービンとSECのレビットは、

共同声明でボーンを非難し、

規制無用を法制化するよう勧告した。

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1998年7月24日

グリーンスパン
「デリバティブ取引は専門家による相対取引なら規制は不要です。」

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バニー・フランク下院金融委員会委員長
「ボーンは、まず政府側に却下され、議会にも却下された。

2000年 グラム議員がデリバティブの規制免除法案を通したんだ。

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2000年6月21日
フィル・グラム上院銀行委員会委員長
市場を統一して規制の重荷が減る法案は必要です。

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グラムは議員引退後、UBSの副会長に就任。

1993年から彼の妻は、エンロンの重役を務めた。

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ラリー・サマーズ財務長官1999-2001
「今年中に店頭デリバティブ取引について

法的な整備を整えるための法律を制定できるよう切に願っています。」

サマーズは後に某ヘッジファンドの顧問になり、

2000万ドルを受け取った。


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グリーン・スパン FRB議長
「私はサマーズ長官の意見を支持します。」

2000年12月 商品先物近代化法が議会を通過した。

ロビイストも協力した同法はデリバティブ規制を禁じている。

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フランク・パートノイ カリフォルニア大学 金融法教授
「事態は加速しました。デリバティブや新金融商品が

2000年以降爆発的に増えます。


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2001年1月20日 ブッシュ大統領就任

金融業界は統合が進んで多くの利益を生み強力になった。


業界の中心は投資銀行5行

  • ゴールドマン・サックス
  • モルガン・スタンレー
  • リーマン・ブラザーズ
  • メリルリンチ
  • ベアー・スターンズ



金融複合企業2社

  • シティグループ
  • JPモルガン


保険会社3社

  • AIG
  • MBIA
  • AMBAC


格付け機関3社


  • ムーディーズ
  • スタンダード&プアーズ
  • フィッチ

彼らは証券化という手法で連鎖関係を築き、

住宅ローンを使って数兆規模の商品を作り上げた。


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バーニー・フランク 下院金融委員会委員長
「住宅ローンを組んだら、昔なら貸しては返済を期待する。

借金は返済を求められた。

証券化が開発されると、

貸しては焦げつきを心配せずに済む。」

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ヌリエル・ルービニ NY大学ビジネススクール教授

「昔、家の購入者たちは貸し手に住宅ローンを月々払った。

ローンは長期だから貸しては慎重だ。

新手法では貸し手がローン債権を銀行に売る。

銀行は住宅ローンを大量に集め、

車のローンと学資ローン、カード債務など

別のローンと組み合わせ債務担保保証券 CDOを作る。

そしてCDOを投資家に売るのだ。

住宅ローンの返済金は世界の投資家の元へ

銀行は格付け機関にCDOの評価を頼む。

大抵は最高評価であるAAAが与えられる。

安全を重視する年金基金は高評価のCDOを好んだ。

この手法は時限爆弾だ。

貸し手は、返済が滞っても平気なため、危険な相手にも貸し出す。

投資銀行も高利益なCDOの販売しか考えない。


格付け機関も銀行から金をもらい、

CDOの格付けが違っても責任を負わない。


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ジリアン・テット フィナンシャル・タイムス紙米編集長
「規制はないから何も心配ない。

そこでさらにローンが求められた。」

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2000年から2003年の間に住宅ローンは増え続け4倍近くになる。
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証券化の連鎖に関わった者は最初から最後まで、

ローンの質に興味はなく、ローンの量と手数料しか関心がなかった。

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2000年代初めサブプライムという危険な住宅ローンが増える。

サブプライムローンは大量にCDOに入ったが、

格付けはAAAのままだった。



投資銀行は利率の高いサブプライムローンを好んだ。

これにより略奪的融資が非常に増えた。

借りては必要以上に高いローンを借りさせられ、

多くが返済不能に陥った。

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